中山 郁美[日本共産党福岡市議会議員(早良区)]

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予算議会

2019年度修正予算案に対する賛成討論

予算議会, 議会報告

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、条例予算特別委員会の委員長報告にある通り、修正された議案第30号に賛成し、討論を行います。わが党の意見につきましては、代表質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。

今回修正によって削除されるロープウエー関連の5000万円の予算案は、まことにずさんなものであったことが、審議の中でも浮き彫りになりました。

同計画の実現可能性を検討するための予算であるにもかかわらず、3月1日号の「市政だより」で、すでに必要性・安全性・景観などの面で市が勝手に「Q&A」をつけ、検討結果の「答え合わせ」を先にしてしまっているように、5000万円の調査費は市民をだますための偽装に過ぎず、全くのムダづかいであることが審議で明確になりました。

ロープウエー計画の必要性についていえば、ウオーターフロント地区に数千億円とも言われる規模の財政を投入してMICEやクルーズ船のための施設をつくり、観光客などが将来激増するからそれを運ぼうというのが、市長のロープウエー計画です。

しかし市の予測でも福岡市の人口は2035年には減少に転じ、国内旅行者と訪日外国人をあわせた日本全体の交流人口も、政府系シンクタンクですら現在の6億9000万人から2040年には6億4000万人へと大幅に減少すると予測しています。

それなのに市長は、このエリアだけは20年から30年後も人の往来が現在の3倍になるという虫のいい予測を前提にしています。わが党の質問は、こうした市のたてる需要予測がまったくいい加減なものであり、そのような大型開発はこれまでも一部の大企業だけが潤って、地元の市民はかえって貧しくなっているように効果がないことを明らかにしたのであります。

さらに、ロープウエーの「耐風速能力」、すなわち風に耐える能力をめぐって市が研究会と市民をだましてデタラメな数字を並べていたことも審議の中でわかりました。

「市政だより」をみると、ロープウエーの耐風速能力は「風速毎秒20〜30m」とされており、他の交通手段は全て「25」と記されていますから、あたかも遜色がないように見えます。

これのもとになった研究会の資料を見てみると、「耐風速能力」とは「運行見合わせを判断する風速」であるとだけ記されており、わが党も調査してみたところ、ロープウエー以外の交通手段では確かに「運行見合わせを判断する風速」は「25」でした。しかし、ロープウエーの「20〜30」という数字については、上限の「30」が箱根のケースであることをつきとめましたが、下限を「20」とする根拠がわかりませんでした。

なぜなら、全国各地のロープウエーを調べたところ、「運行見合わせを判断する風速」は多くが「15」で、場所によっては「10」のところもあったからです。

わが党が条例予算特別委員会の審議でこの「20」の根拠について尋ねたところ、住宅都市局長は北海道の「函館山ロープウエーなどで秒速20mの実例がございます」と答弁しましたが、なぜ全国のロープウエーのほとんどが「15」であるのに、それを無視して函館山の「20」を下限としたのかが説明がつかなくなりました。

結局、審議の中で住宅都市局長は、有識者の研究会や「市政だより」に出したこの数字は「運行見合わせを判断する風速」だけでなく、支柱など構造物が風に耐える基準となっている「風荷重」の数字を混ぜたものだと答弁せざるをえなくなりました。ロープウエーの下限である「20」とは「運行見合わせを判断する風速」ではなく、支柱などの「風荷重」だったのです。

聞いたら誰でもわかる通り、「運行見合わせを判断する風速」と、支柱など構造物の「風荷重」とは、まったく別の概念であり、この2つの概念は絶対に混ぜてはいけないものです。実際、モノレールで見てみると、「運行見合わせを判断する風速」は「25」で「市政だより」にある通りですが、これを構造物の「風荷重」で見てみると「40」になってしまいます。わが党は国土交通省の担当者にも確認しましたが、この2つは全く別の概念だと明言しました。

なぜここまで住宅都市局が「20」を下限の数字として維持することにこだわったのかといえば、他の交通手段がぜんぶ「25」なのに、ロープウエーだけ下限を「15」にしてしまうと明らかに見劣りしてしまうからです。だからこそデタラメな数字をつけてでも下限は「20」、上限は「30」、平均は「25」だという体裁を守ろうとしたのであります。

あまりにも情けない市長への忖度であり、まさに国で起きている統計偽装と同じではありませんか。

国交省の外郭団体である「交通安全環境研究所」は2009年の論文の中で「ロープウェイの弱点は、比較的、風に弱いことである。ゴンドラはロープにより吊され、風に揺れやすい構造となっており、風によりゴンドラが大きく揺れた場合、支柱に衝突するといった事故に結び付く可能性もある」と指摘しています。専門家から見てロープウエーが風に弱いことは自明とも言える課題であり、人の命がかかった安全性に関わる問題で、数字を偽装し、あたかも風の影響が小さいかのように見せかけるなど絶対に許されないことです。

このような「ロープウエーありき」の予断に満ちた市政のもとでの検討予算を認めがたいと考えるのは当然であり、今回の修正は実に当を得たものです。わが党は今回の削除修正に賛成いたします。

高島市政はその誕生以来、安倍政権の暴走政治への追随、そのもとでの大企業奉仕の大型開発と規制緩和、他方での市民犠牲という、この3点を特徴とする政治を推し進めてきました。

これに対してわが党は、一貫してこの間違った3点をただすために全力をあげ、幅広い個人・団体・政党との共同を追求してきました。

直近の2018年の市長選挙でも、安倍暴走政治との対決という点では消費税増税の中止、市民犠牲の政治をただすという点では高齢者乗車券の廃止・削減計画の撤回、そして大型開発の見直しという点ではロープウエー構想の断固阻止を象徴的な問題としてとりあげ、市民の共同の候補を擁立し、市政の転換をめざしてきました。そして実際に、ロープウエー問題を筆頭にこの3点は市長選挙の大争点に押し上げられたのであります。

高齢者乗車券については4万を超える署名運動を前に「当面、事業を継続する」と市が答弁せざるを得なくなり、廃止・削減計画は撤回に追い込まれました。また、消費税の増税中止を求める共同も党派の違いを超えて広がっております。

そして、今議会ではロープウエーの実現可能性を検討する調査予算を削除するという共同が、野党だけでなく与党の中にも大きく広がりました。わが党だけでなく、与野党のさまざまな会派が市民アンケートや意見聴取をふまえこうした結論に到達したことを見ても分かる通り、市長のロープウエー計画への反対は、まさに市民の世論であり、民意そのものだと言わねばなりません。

わが党は、この民意を非常に重いものだと考えます。

もともとロープウエー計画は、髙島市政がすすめるウオーターフロント地区再整備という大型開発の象徴です。その突破口となる検討予算が党派を超えた共同によって削除されることは、ロープウエー計画そのものを中止に追い込み、ひいては髙島市長が推進するムダな大型開発全体を見直していく重要な第一歩となりうるものです。

同時に、この修正部分を除き、髙島市長が提案した2019年度一般会計予算案は、地方自治法に定められた「住民の福祉の増進を図ることを基本」とするという自治体の役割に照らして、重大な問題を抱えていることは明らかであり、わが党はその部分には明確に反対であります。

消費税増税や憲法改悪など安倍政権の暴走政治に対して、髙島市政はこれに追随する姿勢を、代表質疑などの中であらわにしました。

大型開発と規制緩和についていえば、従来から進めてきた人工島事業には150億円、「天神ビッグバン」には11億円、ウオーターフロント地区の再整備には9億円が新年度投入されるのに加え、「天神ビッグバン」を博多駅周辺にも広げる「博多コネクティッド」、博多港全体の再編につながる箱崎ふ頭の埋立てなどが新たに盛り込まれております。

他方で、市民生活の分野については、市民いじめの「行革」を引き続き推進し、障害者の福祉乗車証の廃止が進められようとしています。地下鉄の無料パスである福祉乗車証から上限を設けたICカードに移行することで、障害者の外出の機会が制限され、家に押し込められるようになってしまいます。また、ICカードに変えることで地下鉄に乗りにくくなったという当事者の苦情も出ています。今必要なのは制度を存続させるとともに、所得制限を元に戻し、福祉乗車証のままで他の交通手段でも使えるように切り替えることですが、市長はこの願いに背を向けたままです。

さらに、高いままに据え置かれた国民健康保険料、1戸も新規に建設されない市営住宅、保育園に入れない子どもが2747人にも達する貧困な保育行政、拡大されない少人数学級、消費税増税対策を除けば2億円足らずと最低水準に抑え込まれた中小企業振興予算など、市民を犠牲にした内容が盛り込まれております。

わが党は、今議会の代表質疑などで市民本位の予算に組み替えるよう、市長に迫ってまいりましたが、市長はこれには応じようとしませんでした。

そうしたもとで、わが党は第一に保育所・介護施設のさらなる整備やコミュニティバスの導入など生活保障の充実、第二に住宅リフォーム助成や若年新規雇用拡大助成制度の創設など経済活性化のための施策の充実、第三に自主的な地域活動への支援の強化、第四に市長自らの非核平和都市宣言など平和行政の前進、第五に市民参加での浪費の是正、そして第六にロープウエー関連予算の削除という6つの柱を盛り込んだ、抜本的な予算組替えの動議を条例予算特別委員会で提案し、幅広い共同を呼びかけてまいりました。しかし、残念ながらこれも採択には至りませんでした。

こうした一連の経過を受けて、ロープウエー検討予算を削除することに限定した修正案が最終的に残りましたが、先ほども述べました通り、これは圧倒的な市民の意思を反映したものであり、また、髙島市政の根本問題の一つを見直していく重要なきっかけになるものだと重く考え、わが党として今回賛成することといたしました。

以上でわが党の賛成討論を終わります。